ユウたちが見ていたモニターが消えてしまった。

クロエ
「ここで故障なんて・・・・・」

ユウ
「なんてこと・・・まずいわね」

ユウはアスカの方に視線をやる。
(この子を帰すか・・・どうする・・・)

オペレーションルームがざわつく。

少しするとスピーカーから声がする。
「一刻も早くあすかちゃんから引き離さいないと・・・」
「ああっ、ユウのためにもな・・・」

ユウ
「!!」
懐かしく、聞き覚えのある声だ。

クロエ
(誰の声?・・・)

「ユウ・・・私の前から居なくなったりしないよね?」
「そんなことあるわけないでしょ!あすか。」

ユウ
(こ、これってまさか・・・)

そしてモニターが回復した。

だが映し出されたのはモノクローム世界だった。
そこには橋の欄干に隠れるように座って泣いている
子供の頃の明日架だ。


「これは・・・
 あの子の記憶が映し出されているのか?」
洞察力のするどいクロエは呟く。
「た・・・たぶんそう・・・」
力なく答えるユウ。

モニターに映し出される世界
泣いている明日架の所に駆け寄ろうとする優。
そうさせないようにタクシーの中から手が伸びる。
「あなたのためなのよ」
その声がした直後、優の手を掴む。
優はタクシーに引き込まれていく。
引き込まれる寸前に優は明日架に向かって
声を投げかける。

「明日架ぁ!!ゴメン!!」

アスカがユウの方をみると
目をつむりうつむき、手を握りしめ微かに震えていた。
アスカ
(そうか・・・お前から明日架を奪ったというのは・・・) 
そしてあすかが黄昏を受け入れ
世界が黄昏の飲まれる瞬間まで映し出された後、
元の金色の世界がモニターに映し出された。

アスカはこの世界の現実を理解する。
ユウが置かれた立場も理解する。しかし言葉が出ない。
(・・・お前はどれだけ重たいものを
 たった一人で背負ってきたんだ。)


元の金色の世界が映し出されるようになったモニター。
あすかが明日架を責めていた。

「黄昏を私が導いて・・・私はあの日、
  世界を消し去った。全部捨てた。諦めた。」
そして捨てたはずの感情が抑えきれなくなって


「なのに!」

「なのに!なのに!なのにー!」
遂に怒りの感情が爆発する


「あなたはたくさんの友達を作って、たくさん笑って・・・
 そんなのずるい!ずるいずるいずるい!全部なくせばいい!
 失えばいいのよ、あなただって!」


そのあすかの怒りをみたクロエ

「ユウ、キミの思った通りだったね。」


クロエの声が届いてないのか、思わず呟く
「・・・そうだよね。私のせいで
  自分一人だけ辛い思いをして・・・」

ユウの言葉でクロエは昔のことを思い出していた。
(そうか。キミはまだ・・・)

モニターでは明日架が穏やかな表情であすかの方に歩き出し

「私もね、いろんなフラグメントを見てきたよ。それで分かったんだ」
自分の予想とは違った反応でハッとするあすか。明日架は話を続ける。

「私には、この土宮明日架にはいろんな可能性があるって・・・

 それなのに私は罰を言い訳にして目をつむってきた。
  まるで黄昏の中にいるみたいに。だからね・・・
  私はもう、今日ちゃんの事を言い訳にしない。
  誰のせいにもしない。」

何かを思い出すかのように少し空を見上げ

「優が言ってくれたように…
  シリアスカが言ってくれたように・・・」

あすかと目を合わせ

「自分と向き合う。世界の有り様は自分の行動の帰結。
  その覚悟をして初めて人は自由になれる」


すると明日架の背中に翼が現れる。
「私は自由になると決めた
 あなたも・・・罰から逃れていいんだよ」


その言葉であすかの怒りの感情が静まっていく。
そして感情の無かったあすかの表情が子供らしい表情に変わった。


それを見たユウはアスカの方に視線をやると
「さぁ、アンタは自分のフラグメントに帰りなさい」


アスカ
「ああ。」


アスカはゲートの方に歩き出す。ゲートに入る瞬間、
後ろからユウが優しく抱きしめる。
「一つだけ約束して・・・
 もしアンタのフラグメントになんの変化がなかったとしても
 ・・・・・自分を大切にして・・・お願い」


ハッとするアスカ。すぐに笑みをうかべ
「ああ・・・分かった」


ユウはそっとアスカから離れ
アスカはゲートに入り、そして振り返る。
「ユウ!またな!」


その言葉に一瞬驚きの表情をみせるが
すぐ笑顔になり
「またね!アスカ!」


 
ユウはアスカを送り出しゲートを閉鎖した。
振り返りモニターに目をやるとモニターがぼやけて見えずらい。
そして瞳からこぼれたものが頬を伝う。
「あ、あれっ?あたしどうしたんだろう?おかしいな」


ユウが涙を捨てたことを知っていたクロエ。
穏やかな笑顔でユウの前に。
「ユウ、キミも罰から逃れてもいい。いや、その罰は終わらせていい。
 キミはそれだけのことをやってのけたんだ。」

ユウは肩をポンと叩かれ、後ろから声がする。聞き覚えのある声だ。


ナナ
「そうだよ。ユウ、大事な時に力になれなくてゴメン。」


ミア
「ユウさん、ホントにごめんなさい。」


振り返るユウ。
「あ・・・・あんたたち・・・・・」


クロエは信じられない光景に固まる。
「・・・・・・ナナ?・・・・・ミア?」


平静を保っていたクロエだが涙が溢れ止められない。
ナナとミアに抱き付くクロエ。
ユウもまた皆を抱きしめる。

ユウ
「謝ることなんかない・・・

帰ってきてくれて・・・ありがとう」

クロエも無言で頷く。
ユウはナナとミアの顔を見て
「こんなに嬉しいことはないよ。」


クロエ
「ボクもだ。」


ナナ
「もちろんあたしたちもだよ。」


ミア
「みなさんとまた会えて嬉しいです。」


そんな4人の姿を見ているマユキも涙ぐんでいる。
「間に合って良かった。」


するとミアがモニターの方を指さしモニターを見るように促す。
皆がモニターに目を向けると
号泣するあすかを明日架が優しく抱きしめていた。
あすかの心は明日架によって救われたようだ。
そして明日架の背中に現れた翼が2人を包み込んでいく。


モニターは真っ白に輝き、ユウたちの居る空間も輝きだす。
ユウはモニターに目を向ける。


「ありがとう明日架。おかえりあすか!」

 
そして全てが暖かな白い光に包まれた。




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